本選びの失敗が、再入門の挫折のはじまり
「もう一度、数学をやり直してみたい」。そう思って書店の学習参考書コーナーに行くと、あまりの選択肢の多さに圧倒されます。大人向けのやさしい解説本、マンガでわかる系、受験用の問題集、教科書ガイド……。そして多くの人が、ここで最初のつまずきを経験します。数学の再入門は、最初の1冊の選び方でほぼ勝負が決まるからです。
この記事では、社会人の数学再入門でよくある本選びの失敗パターンと、失敗しないための選び方、具体的なおすすめ本を順に解説します。
よくある失敗パターン3つ
失敗1:「やさしい解説本」だけで終わってしまう
「文系でもわかる」「マンガでわかる」系の本は読みやすく、最初の1冊としては優秀です。しかし、こうした本を読んだだけでは数学の力はつきません。数学は「テクネー」、つまり体で覚える技術的な学問であり、自分の手を動かして問題を解く過程がなければ、読んだそばから抜けていきます。
失敗2:いきなり難しい問題集に挑む
逆に、「どうせやるなら本格的に」と青チャートのような受験生向けの中上級問題集から始めるのも危険です。ブランクのある大人がいきなり挑むと、最初の単元で歯が立たず、数学そのものが嫌いになって終わります。
失敗3:複数の本に手を出して、どれも中途半端
「あの本も評判がいいらしい」と参考書を買い足していく「参考書の浮気」も典型的な失敗です。再入門で必要なのは、軸になる1冊を徹底的に反復することです。
本は2種類ある──「読み物」と「問題集」
失敗を避けるために知っておきたいのが、数学の本には役割の異なる2種類があるということです。1つは数学の全体像をつかむための「読み物(導入書)」、もう1つは実際に手を動かして力をつける「問題集」。この2つを正しい順番で使い分けるのが、再入門の王道です。
最初の1冊:『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』
導入書としておすすめなのが、西成活裕さんの『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』です。文系の編集者に東大教授が対話形式で数学を教えていく構成で、中学数学の本質が驚くほど平易に解説されています。続編の『東大の先生!文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!』とあわせて読めば、中学〜高校数学の全体像が頭に入ります。
学習を始める前に全体像という「地図」を手に入れておくと、その後の個々の単元の理解度がまったく違ってきます。知らない土地を歩く時に地図があるかないかの違いと同じです。
本命の1冊:白チャート(チャート式 基礎と演習)
全体像をつかんだら、いよいよ問題集です。再入門の本命としておすすめなのが、チャート式シリーズで最も基礎レベルに位置する『チャート式 基礎と演習』、通称「白チャート」です。
おすすめする理由は3つあります。第一に、問題のすぐ下に解答・解説が載っている体裁で、反復練習が圧倒的にしやすいこと。第二に、解説が非常に丁寧で、ブランクのある大人でも独学で読み解けること。第三に、「基礎レベル」とはいえ到達点が高いことです。白チャートを反復してマスターすれば、偏差値60レベル、数検でいえば準1級レベルまでこの1冊で到達できます。
買った後の「進め方」も同じくらい重要
ただし、白チャートは分厚い問題集なので、何の作戦もなく1ページ目から進めると途中で息切れします。単元ごとに完全制覇してから次に進む、分からない問題はすぐ解答を見て自分に説明する、問題ごとに理解度を記録して反復に濃淡をつける──こうした進め方の工夫が、完走できるかどうかを分けます。
こうした白チャートの具体的な進め方は、エンリッチ実学院の数学教室で6つの学習メソッドとして体系的に解説しています。独学で進め方に迷ったら、参考にしてみてください。
再入門でよくある質問
Q. 中学数学から完全に忘れています。それでも高校数学の白チャートからで大丈夫?
A. 多くの場合、大丈夫です。白チャートは超基礎レベルから丁寧に積み上げる構成で、高校数学を進める中で必要になる中学内容は、その都度思い出しながら進められます。導入書で全体像をつかんでから入れば、ブランクが20年あっても十分に再スタートできます。どうしても不安なら、導入書の中学数学編を先に読んでおくと安心です。
Q. 数I・Aから順番にやるべきですか?
A. 基本的には数I・A→数II・B→数III・Cの順がおすすめです。高校数学は前の範囲の知識を土台に次の範囲が組み立てられているため、順番に進めるのが結局いちばんの近道になります。ただし1冊をまるごと終えてから次へ、と構える必要はなく、単元ごとに区切って完全制覇しながら進めていけば、達成感を積み重ねながら前進できます。
まとめ──導入書で地図を手に入れ、白チャートで走る
社会人の数学再入門は、「読み物で全体像→白チャートで反復」という2段構えが失敗しない王道ルートです。最初の1冊は気軽に読める導入書でかまいません。ただし、そこで終わらせず、必ず手を動かす問題集へ進むこと。それが、読んだだけで終わらない、本物の数学力への道です。
エンリッチ実学院では他にも学び直しに役立つ情報を発信しています。公式サイトもぜひご覧ください。
