真面目な人ほど、数学で止まる
数学の学び直しで足が止まる人には、ある共通点があります。それは「真面目で、完璧主義」だということです。1問1問を完全に理解してから次へ進もうとする。分からない問題は、自力で解けるまで何十分でも粘る。1周目から全問をマスターしようとする──。
一見、模範的な学習姿勢に見えます。しかし断言します。この完璧主義こそが、社会人の数学学習を止めている最大の犯人です。この記事では、なぜ完璧主義が機能しないのか、そして「8割で次へ行く」学習法がなぜ正解なのかを解説します。
なぜ完璧主義は機能しないのか
理由1:数学は「1周で固める」設計になっていない
そもそも数学は、読んで理解すれば身につくような「知識」型の学問ではありません。実際に手を動かす実践を通じて、体で覚えていく「技術」型の学問──いわゆる「テクネー」です。水泳の本を完璧に読み込んでも泳げるようにならないのと同じで、数学の定着は反復によってしか起こりません。
反復が前提ということは、どうせ同じ問題に2回、3回と戻ってくるということです。それなのに1周目で100%を目指すのは、初めて泳ぐ日に完璧なフォームを求めるようなもの。構造的に無理があるのです。
理由2:「悩む時間」のほとんどはムダになる
完璧主義の人は、分からない問題を前に長時間うんうんと考え込みます。しかし、まだ知識が頭に入っていない段階での「考え込み」は、材料なしで料理をしようとしているようなもので、ほとんど成果を生みません。30分悩んで解けなかった問題の解答を見て、「こんなの知らなければ解けるわけがない」と感じた経験はないでしょうか。その30分は、解答を最初に読んでいれば3分で済んだのです。
理由3:進まない感覚が、モチベーションを殺す
完璧主義の最大の実害はこれです。1問に時間をかけすぎると、問題集が一向に進みません。「まだこんなにページが残っている」という感覚は、学習意欲を確実に削っていきます。時間の限られた社会人にとって、進んでいる実感はガソリンそのもの。完璧主義はこのガソリンを漏らし続ける穴なのです。
処方箋1:分からなければ「すぐ解答を見る」
では、どうするか。1つ目の処方箋は「セルフレクチャー」です。問題を見て、解法がすぐに浮かばなければ、粘らずにすぐ解答・解説を読む。そして、その内容を自分自身に講義するように説明してみる。これだけです。
紙に解答を丁寧に書き写す必要もありません。この方法なら1問あたりの時間が劇的に短縮され、同じ学習時間で触れられる問題数が何倍にもなります。数学は反復で身につくのですから、1回の深さより回転数を優先する方が、結果的に深い理解に到達するのです。
処方箋2:理解度に「濃淡」をつけ、8割で先へ進む
2つ目の処方箋は、全問題を平等に扱うのをやめることです。問題には1問ごとに「重み」があり、一度で覚えられる問題と、何度やっても引っかかる問題が必ず混在します。そこで、問題を解くたびに理解度を記号で記録していく「ステータス法」を使います。
よくできる問題は反復から外し、できない問題に反復を集中させる。そして単元全体としては、8割方つかめたと感じたら先へ進んでかまいません。残りの2割は、2周目、3周目の反復と、後の単元を学ぶ中で自然に埋まっていきます。数学の単元は相互につながっているため、先へ進むこと自体が、前の単元の理解を深めてくれるのです。
「8割で進む」は妥協ではなく戦略
誤解しないでほしいのは、これは「いい加減でいい」という話ではないということです。最終的に目指すのは全問マスターです。ただし、それを1周目で達成しようとするのではなく、複数回の反復で「結果的に」達成する。完璧は、目指す場所であって、通過点ごとに要求する基準ではない。この設計の違いが、完走できる人とできない人を分けます。
こうしたセルフレクチャーやステータス法を含む学習メソッドは、エンリッチ実学院の数学教室で、白チャートを軸にした6つの方法論として体系的に解説しています。
完璧主義が顔を出した時の「合言葉」
とはいえ、長年の完璧主義は癖になっているので、学習中に何度も顔を出します。「この問題、まだ完全には分かっていないのに進んでいいのか」という不安がよぎった時のために、合言葉を用意しておきましょう。「どうせまた戻ってくる」です。反復前提の学習設計では、今の自分が取りこぼしたものは、2周目の自分が拾ってくれます。今日の自分が全部背負う必要はないのです。この感覚がつかめると、学習は驚くほど軽く、速くなります。
まとめ──完璧主義を手放した人から、完走していく
数学の学び直しで必要なのは、強い意志でも長い学習時間でもなく、「8割で次へ行く」勇気です。すぐ解答を見る、理解度に濃淡をつける、反復で仕上げる。完璧主義を手放した瞬間、止まっていたページが進み始めます。そして進み始めた学習だけが、最後まで続くのです。
学び直し全般の情報は、エンリッチ実学院の公式サイトでも発信しています。
