「2乗してマイナスになる数」とは?虚数の入門をやさしく解説

「2乗してマイナスになる数」と聞いて身構えた人へ

「2乗してマイナスになる数があります」と言われると、多くの人は「そんな数あるわけない」と感じます。実際、私たちが普段使っている数は、プラスでもマイナスでも、2乗すれば必ずプラスになります。2×2も、(-2)×(-2)も、答えは4です。

では「2乗するとマイナスになる数」とは何なのか。それが「虚数(きょすう)」です。名前は難しそうですが、考え方そのものはシンプルです。この記事では、数学が苦手な大人でも分かるように、虚数の正体をやさしく解説します。

そもそも、なぜそんな数を考えるのか

虚数を理解する前に、「なぜわざわざ、ありえなさそうな数を考えるのか」という疑問に答えておきましょう。きっかけは、方程式を解く中で生まれました。

例えば「2乗したら4になる数は?」なら、答えは2と-2で問題ありません。ところが「2乗したら-1になる数は?」を考えると、普通の数(実数)の中には答えがありません。昔の数学者たちは、ここで「答えがないから終わり」とせず、「では、2乗すると-1になる新しい数を作ってしまおう」と発想を転換しました。数学では、必要に応じて新しい数を”発明”してきた歴史があるのです。マイナスの数も、ゼロも、最初は受け入れがたい新参者でした。

虚数の正体──記号「i」の登場

こうして導入されたのが、虚数単位「i」です。iは「2乗すると-1になる数」と定義されます。式で書けば、i × i = -1。たったこれだけです。

この約束を1つ加えるだけで、それまで「解なし」だった方程式が解けるようになります。例えば「2乗して-4になる数」は、2iと-2iだと言えるようになる(2iを2乗すると、2×2×i×i=4×(-1)=-4になります)。新しい数を1つ発明したことで、数学が扱える世界が一気に広がったわけです。

実数と虚数を合体させた「複素数」

さらに、普段使う実数とこの虚数を組み合わせた数も考えられます。「3 + 2i」のように、実数の部分と虚数の部分を足し合わせた形の数を「複素数」と呼びます。複素数は実数を含むより大きな数の世界で、これによって数学は飛躍的に表現力を増しました。高校では数学IIで複素数が登場し、二次方程式の解を考える場面などで活躍します。

目に見えないのに「役に立つ」のが数学の面白さ

「そんな架空の数、現実には役に立たないのでは?」と思うかもしれません。ところが、虚数・複素数は現実社会のあちこちで大活躍しています。代表的なのが電気・電子工学です。私たちの生活を支える交流電流の計算は、複素数を使うことで驚くほど簡単になります。ほかにも、量子力学、信号処理、制御工学など、現代テクノロジーの基盤に複素数は欠かせません。スマホも電力網も、虚数なしには成り立たないのです。

ここに、数学の本質的な面白さが表れています。数学では、虚数のように目で見て確認できない概念がバンバン登場し、頭の中や数式・グラフの上でしか扱えない世界で思考を進めていきます。そして、その目に見えない概念が、めぐりめぐって現実の便利な技術を生み出す。「役に立たなそうなものが、実は世界を動かしている」という逆説こそ、数学を学ぶ醍醐味の1つです。

大人が虚数を学ぶ意味

虚数の計算をマスターすること自体が、日常で直接役立つわけではないかもしれません。しかし、「目に見えない概念を、約束(定義)を出発点に論理だけで組み立てていく」という体験は、数学的思考そのものの訓練になります。これは、目の前にない問題を抽象的に捉え、論理で解決策を構築する力──仕事でも効いてくる力──を鍛えてくれます。虚数は、その入り口として最高の題材なのです。

「i」という名前と記号の由来

少し雑学的な話を添えておきましょう。虚数は英語で imaginary number(想像上の数)と呼ばれ、虚数単位の記号「i」はこの imaginary の頭文字から来ています。実は「虚数」「想像上の数」という名前は、登場した当初、「そんな実在しない数は本物の数ではない」という、やや否定的なニュアンスを込めて付けられたものでした。

しかし今では、虚数なしに現代の科学技術は語れません。かつて「想像上の数」とバカにされたものが、世界を動かす道具になった。数学の歴史には、こうした”はみ出し者”が後に主役になる逆転劇がいくつもあります。名前の由来を知るだけでも、無機質に見えた記号に物語が宿り、少し親しみが湧いてこないでしょうか。

まとめ──虚数は「発明された便利な道具」

2乗してマイナスになる数「虚数」は、ありえない数ではなく、数学の世界を広げるために発明された便利な道具です。i×i=-1という1つの約束から複素数の世界が開け、それが現代テクノロジーを陰で支えています。難しそうな概念も、成り立ちから追えば必ず腑に落ちます。これこそ、大人になってから学び直す数学の面白さです。

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