「学んでもすぐ忘れる」のは、覚え方が間違っているから
本を読んでも内容を忘れる。セミナーで学んでも数日で抜ける。せっかく勉強したのに身についている実感がない──。社会人の学び直しで最も多い悩みが「すぐ忘れる」ことです。
多くの人はこれを「記憶力が衰えたから」と片づけますが、本当の原因は別にあります。それは、知識を孤立した「点」のまま覚えようとしているから。この記事では、なぜ孤立した知識は忘れるのか、そして「ゲシュタルト」の力で記憶を定着させる方法を解説します。
孤立した知識が忘れられる理由
脳は、他の何ともつながっていない情報を、優先的に忘れるようにできています。電話番号や初対面の人の名前がなかなか覚えられないのは、それらが既存の知識と結びついていない孤立した点だからです。
逆に、自分の好きな分野の知識はいくらでも覚えられます。サッカー好きが選手名や戦術を苦もなく記憶するのは、すでに頭の中にある豊かな知識のネットワークに、新しい情報が次々と引っかかっていくからです。つまり「忘れる」のは記憶力の問題ではなく、新しい知識を引っかける「網」が不足している状態なのです。
記憶を定着させる「ゲシュタルト」とは
ここで鍵になるのが「ゲシュタルト」という概念です。ゲシュタルトとは、バラバラの要素が相互につながり、1つの統合された全体像になった状態を指します。
知識は、このゲシュタルトに編み込まれた時に初めて、強固に定着し、自在に使えるようになります。1つの知識が他の多くの知識と結びついていれば、どこか1本の糸をたどれば芋づる式に思い出せる。記憶が消えにくいのは、たくさんの糸でネットワークに縫い留められているからです。「すぐ忘れる」を解決するとは、要するに、この知識のネットワークを育てることなのです。
定着させる方法1:点を「線」に、線を「面」につなげる
では、どうネットワークを育てるか。歴史の学び方が好例です。まず一問一答で基本用語という「点」を頭に入れる。次に、流れを意識した問題集で点と点を結んで「線」にする。最後に、過去問や自分専用ノートで知識同士を縦横に関連づけ「面」にしていく。
この「点→線→面」のプロセスは、まさにゲシュタルトを作る作業そのものです。最初はバラバラだった用語が、因果関係や時代背景でつながり、やがて1枚の地図になる。地図になった知識は、もう簡単には忘れません。この考え方は歴史に限らず、あらゆる科目に応用できます。
定着させる方法2:「自分に説明」して結びつきを作る
もう1つ強力なのが、学んだことを自分に説明し直す方法です。新しい知識を理解する時、ただ受け取るのではなく、「これは前に知ったあの知識と似ている」「つまり要するにこういうことだ」と、既存の知識と結びつけながら自分の言葉で説明してみる。
この「自分への説明」は、新しい点を既存のネットワークに縫い付ける作業です。説明しようとして言葉に詰まる箇所は、まだネットワークにつながっていない弱い部分。そこを意識して埋めていくと、定着率が大きく変わります。読みっぱなし・聞きっぱなしが最も忘れやすいのは、この縫い付け作業を省いているからです。
定着させる方法3:分野を広げ、網の面積を増やす
3つ目は、知識の網そのものを大きくすることです。網が広く密であるほど、新しい知識の引っかかる場所が増え、定着しやすくなります。だからこそ、特定分野に偏らず、国語・数学・歴史・科学と幅広く土台を作ることが、結果的に1つひとつの知識の定着率を底上げします。学べば学ぶほど忘れにくくなるという好循環は、こうして生まれます。
「思い出す練習」が定着を仕上げる
ネットワークを作ることに加えて、もう1つ効果的なのが「思い出す練習」です。記憶は、覚える時よりも”思い出そうとする時”に強化されると言われます。テキストを読み返してインプットを繰り返すより、何も見ずに「あれは何だったか」と自力で引っ張り出す方が、定着には効くのです。
具体的には、1つの単元を学んだら本を閉じ、要点を自分の言葉で言ってみる。問題集なら、解答を隠して自力で解き直す。一問一答で何度も問われるのも、この「思い出す練習」を繰り返させる仕組みです。覚える(つなげる)と、思い出す(引き出す)。この両輪が回った時、知識は本当に自分のものになります。読んだ内容をすぐ忘れてしまうと悩んでいた人も、この2つを意識するだけで、定着率がはっきり変わってくるはずです。
まとめ──忘れるのではなく、つながっていなかっただけ
知識がすぐ忘れるのは記憶力のせいではなく、知識が孤立した点のままだからです。点を線に、線を面につなげ、自分の言葉で説明し、網の面積を広げる。こうしてゲシュタルトを育てれば、知識はネットワークに縫い留められ、簡単には消えなくなります。「覚える」とは、詰め込むことではなく、編むことなのです。
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