ルー・タイスとは何者か
「コーチング」という言葉は、今や日本でもすっかり浸透しました。ただ、巷のコーチングの多くは本来の姿から離れてしまっているとも言われます。その源流に近いのが、アメリカのルー・タイス(Lou Tice)が創始したコーチング(TPIやIIEなどの系統)です。
これは、NASAや国防総省といった政府機関、警察、小中学校から大学までの教育機関、オリンピック選手の育成、さらにフォーチュン500企業の半数以上で公式に採用されてきたプログラムです。ひと言でいえば、「ゴール、つまり夢を叶えるための仕組み」を体系化したもの。自己啓発の精神論ではなく、脳の働きにもとづいて設計されている点に特徴があります。
コーチング最大の核心「現状を超えたゴール設定」
ルー・タイスのコーチングが、他の目標達成プログラムと決定的に違うのは、「現状を超えたゴール設定」という考え方にあります。
普通、私たちは目標を立てるとき、「今の自分の実力はこれくらいだから、現実的にこの辺りを目指そう」と考えます。今あるリソースから逆算して、達成できそうな範囲に目標を置くわけです。コーチングは、これを真逆にします。今の能力や使える手段とはいったん切り離して、自分が心から「したい」「やりたい」「好きだ」と思えることをベースに、自由にゴールを描く。たとえ現時点で実現の方法がまったく見えなくても、本当に望むならそれをゴールに設定するのです。
なぜ「無謀なゴール」が機能するのか
「そんな現実離れした目標に意味があるのか」と思うかもしれません。ところが、ここに人の脳の面白い仕組みが働きます。今の自分には手が届かないゴールを本気で設定すると、まずものの見え方が変わります。これまで視界に入らなかった、ゴール実現につながる情報やチャンスが、急に目に飛び込んでくるようになるのです。
そして、思いつくことを一つずつ実行していくうちに、「どうやって実現するか」の解像度が少しずつ上がっていきます。必要な能力は、ゴールを追いかける過程で後からついてくる。順番が逆なのです。先に「できる自分」を設定するから、それに見合う行動と力が引き出される。これが、コーチングがただの精神論で終わらない理由です。
「成功法則」とは似て非なるもの
よく誤解されますが、コーチングは「成功法則」とは別物です。成功法則でいう成功とは、たいてい「お金持ちになること」を指します。一方コーチングでは、お金はゴールそのものではなく、「ゴールの達成に必要なら集めるもの」と位置づけられます。だから、特別お金を必要としないゴールも当然視野に入ります。何を成し遂げたいか、その中身こそが主役なのです。
このゴール設定には、外してはいけない大前提が2つあります。一つは「今のままでは絶対に達成できない」こと。もう一つは「心の底からやりたいこと」であること。世間や他人の価値観で選んだ目標は、追いかけても苦しいだけです。
ゴールを「自分に馴染ませる」アファメーション
「現状を超えたゴール」を設定しても、心のどこかで「自分には無理かもしれない」という声が残っていると、せっかくのゴールは力を持ちません。今までの自分のイメージが、無意識のうちにブレーキをかけてしまうからです。そこで使われるのが、ルー・タイスのコーチングの代表的な手法であるアファメーションです。
アファメーションを一言でいえば、「言葉によって、自分のセルフイメージを書き換えていく技術」です。人は、自分について抱いているイメージの通りにしか行動できない、とされます。だからこそ、なりたい自分・達成したいゴールを、すでに実現しているかのような言葉で繰り返し自分に語りかける。そうやって「できる自分」が当たり前だと脳に馴染ませていくと、それに見合った行動や発想が自然と引き出されていきます。先ほどの「先にゴールを設定するから能力が後からついてくる」という仕組みを、日常的に後押しするのがアファメーションなのです。
社会人が今日から取り入れるには
難しく考える必要はありません。まずは、世間体や「現実的かどうか」をいったん脇に置いて、「自分は本当は何をしたいのか」をノートに書き出すことから始めてみてください。仕事のこと、学びのこと、暮らしのこと——分野を問わず、心が動くものを正直に並べてみる。その中に、「今のままでは届かないけれど、心の底からやりたい」と思えるものがあれば、それがあなたのゴールの種です。学び直しもまた、その大きなゴールを支える土台の一つとして位置づけると、日々の勉強に芯が通ります。
学び直しとゴールは深くつながっている
コーチングには「バランスホイール」という考え方があり、その重要項目の一つに「生涯学習」が入っています。学んだ知識はゴール達成のために働いてくれますし、学びによって視野が広がるほど、「現状を超えたゴール」も描きやすくなります。基礎学力を学び直すことと、人生のゴールを描くことは、地続きなのです。
入門には、ルー・タイス本人の著書『アファメーション』(原書は『Smart Talk for Achieving Your Potential』)や、彼に直接学んだ苫米地英人氏の『オーセンティック・コーチング』が手がかりになります。まず自分が本当に何を望んでいるのかを掘り下げることから、すべては始まります。学びとゴールを結びつけて前に進みたい方は、エンリッチ実学院ものぞいてみてください。
