「飛ばす」も「こだわる」も、間違えると挫折する
数学の学び直しで誰もが直面するのが、「この問題、分からないけど飛ばしていいのか?」という判断です。飛ばしすぎれば穴だらけになりそうで不安。かといって全問にこだわれば、1問で何十分も止まって前に進まない。この判断を誤ると、学習はあっという間に行き詰まります。
結論を先に言うと、分からない問題は「条件付きで飛ばしていい」です。大切なのは、やみくもに飛ばすのでも全部にこだわるのでもなく、明確な基準を持つこと。この記事では、社会人が学び直しを止めないための「飛ばす・戻る」の判断基準を解説します。
大前提:数学は「積み上げ型」だと理解する
判断基準の前に、押さえておくべき大前提があります。数学は積み上げ型の学問で、前の単元の理解が次の単元の土台になります。例えば二次関数が分からないまま二次方程式に進んでも、うまくいきません。
つまり「飛ばしていいか」は、その問題が後の土台になる種類かどうかで変わります。単元の根幹をなす重要問題と、応用的・発展的な1問とでは、飛ばした時の影響がまったく違うのです。この区別が、判断のすべての出発点になります。
判断基準1:解答を読んで理解できるか
最初の基準はこれです。分からない問題でも、解答・解説を読んで理解できるなら、飛ばさず「すぐ解答を見て進む」のが正解です。自力で解けなくても、解説を読んで「なるほど」と納得できれば、それは消化できる問題。粘らずに解答を見て、自分に説明し(セルフレクチャー)、印をつけて先へ進めばいい。これは「飛ばす」というより「解答を見て前進する」処理です。
判断基準2:解説を読んでも分からないか
問題は、解答・解説を読んでもさっぱり理解できない場合です。この時は2つに切り分けます。
1つは、前提となる基礎が抜けているケース。その単元の手前の知識が分かっていないサインなので、無理に進まず、戻って土台を埋める方が結果的に速くなります。もう1つは、その単元の中でも特に発展的・難解な1問のケース。この場合は、思い切って飛ばして大丈夫です。基礎レベルの問題集にも、ときどき難易度の高い問題が混じっています。1問の難問に何十分もかけて全体が止まるより、印をつけて飛ばし、2周目や3周目で再挑戦する方がはるかに効率的です。
判断基準3:単元の8割が分かっているか
単元全体としての判断基準もあります。その単元の問題の8割方が理解できているなら、残りの2割が分からなくても次の単元に進んでかまいません。数学の単元は相互につながっているため、先に進むこと自体が、前の単元の理解を後から深めてくれることがよくあります。完璧主義で1単元を100%にしてからでないと進めない、という縛りは、社会人の学び直しでは挫折の元です。
「飛ばす」を必ず「印」とセットにする
飛ばす時に絶対に守りたいルールが1つあります。それは、飛ばした問題に必ず印や付箋をつけておくことです。印をつけずに飛ばすと、その問題は「永遠に解かない問題」になってしまいます。
問題ごとに理解度を記号で記録する「ステータス法」や、間違えた問題に付箋を貼る「付箋法」を使えば、飛ばした問題が一目で分かり、2周目・3周目で確実に回収できます。「今は飛ばすが、必ず戻ってくる」という前提があるからこそ、安心して飛ばせるのです。飛ばすことと放置することは、まったく違います。
飛ばした問題は、2周目の自分が解いてくれる
そして覚えておいてほしいのが、1周目で飛ばした問題は、2周目・3周目の自分が解けるようになっていることが多いということです。後の単元を学び、基礎が固まってくると、1周目には歯が立たなかった問題が、すんなり解けるようになる。だから1周目は「飛ばしていい問題」を潔く飛ばし、まず単元全体を一周することを優先しましょう。完成は反復の中で訪れます。
こうした反復前提の進め方は、エンリッチ実学院の数学教室で6つの学習メソッドとして体系的に解説しています。
「飛ばす不安」との付き合い方
頭では「飛ばしていい」と分かっても、飛ばすこと自体に不安を感じる真面目な人は多いものです。「ここを飛ばしたら、後で困るのではないか」という心配が、つい1問にこだわらせてしまう。
そういう時は、「数学は反復前提の学問だ」という事実を思い出してください。1周で完璧にする必要はそもそもなく、飛ばした問題には印がついていて、必ず後で戻ってくる。今日の自分が全部を背負う必要はないのです。むしろ、飛ばせずに1問で何十分も止まって学習全体が進まないことの方が、よほど大きなリスクです。「完璧な1周」より「止まらない複数周」。この発想に切り替えられた人から、学び直しは軌道に乗っていきます。飛ばす勇気もまた、学習の技術の1つなのです。
まとめ──「印をつけて飛ばし、後で戻る」が正解
分からない数学の問題は、解説を読んで理解できるなら飛ばさず前進、解説でも分からない発展問題なら印をつけて飛ばす、基礎が抜けているなら戻る、というのが判断基準です。鍵は、飛ばす時に必ず印を残すこと。「印をつけて飛ばし、反復で回収する」。この運用ができれば、学び直しは止まりません。
学び直し全般の情報は、エンリッチ実学院の公式サイトでも発信しています。
