「いつかやろう」の「いつか」は、たいてい来ない
「いつか本をちゃんと読もう」「いつか勉強し直そう」「いつか新しいことを始めよう」。社会人なら誰でも、胸の中にいくつかの「いつか」を抱えています。しかし正直に振り返ってみてください。その「いつか」は、この1年で何回訪れたでしょうか。
仕事は次々と降ってきて、家庭の用事は絶えず、疲れた夜はスマホを眺めて終わる。こうして「いつか」は静かに先送りされ続け、気づけば5年、10年が経っていきます。人生の後悔の多くは、大きな失敗からではなく、この小さな先送りの積み重ねから生まれます。
では、後悔しないために、社会人は今、何を最優先でやるべきなのか。この記事では「学ぶ」という選択が答えになる理由を解説します。
なぜ「学び」が最優先なのか──理由1:見える世界が変わるから
人間には「スコトーマ(心理的盲点)」と呼ばれる性質があります。人は自分の持っている知識や興味に関係のあるものしか認識できず、知らないことはそもそも視界に入らない、というものです。つまり、知識がない状態では、目の前にチャンスや面白いものが転がっていても、文字通り「見えない」のです。
これは裏を返せば、学んで知識が増えるほど、同じ世界を生きていても見えるものが増えていく、ということです。歴史を学べば旅先の風景の解像度が変わり、経済を学べばニュースの裏側が読め、数学を学べば物事の構造が見えてくる。後悔の少ない人生とは、結局のところ「よく見える目」で生きた人生のことではないでしょうか。
理由2:学びだけが「選択肢」を増やすから
人生の後悔を研究した話でよく言われるのは、人は「やったこと」より「やらなかったこと」を悔やむ、ということです。そして「やらなかった」理由を突き詰めると、多くは「できる気がしなかったから」に行き着きます。挑戦の手前で、選択肢として認識すらできていなかったのです。
知識と基礎学力は、この選択肢を増やす唯一の元手です。読みたい本が読め、興味のある分野に参入でき、新しい仕事に手を挙げられる。逆に、何を学んでこなかった人にとって、世界は「自分には関係のないもの」だらけになっていきます。学びとは、将来の自分に選択肢をプレゼントする行為なのです。
理由3:学びは「複利」で効くから
お金の複利と同じように、知識も複利で増えていきます。知識は単体で存在するのではなく、既存の知識と結びついて初めて深く理解されるため、土台がある人ほど新しい知識の吸収が速くなるからです。学べば学ぶほど、学ぶのが楽になり、速くなる。
複利である以上、効いてくるのは「元本」と「時間」です。つまり、始めるのが早ければ早いほどリターンは大きくなる。30代で始めた学びと50代で始めた学びでは、70歳時点での「見える世界」に天と地ほどの差がつきます。今日が、残りの人生でいちばん若い日です。
では、何から学ぶべきか──答えは「基礎学力」
「学ぶのが大事なのは分かった。で、何を?」という問いには、明確な答えがあります。流行のスキルではなく、高校レベルの「基礎学力」です。元外交官で「知の巨人」と呼ばれる佐藤優さんも、著書『読書の技法』で、本物の知識・思考力の土台は高校・大学入試レベルの基礎学力にあると繰り返し説いています。
具体的には、すべての学びのOSとなる国語力から始め、論理的思考を鍛える数学、人生の戦略の宝庫である歴史へと土台を広げていく。この順番で積んだ土台は何十年経っても陳腐化せず、その上に載せる専門知識や教養の吸収効率を一生にわたって高め続けてくれます。
始め方──大きな決意より、小さな習慣
最後に、現実的な始め方です。「明日から毎日2時間勉強する」という大きな決意は、ほぼ確実に挫折します。おすすめは、失敗しようがないほど小さく始めること。通勤電車で語彙の問題集を10問だけ、寝る前に本を5ページだけ。それでかまいません。
大事なのは量ではなく、「いつか」を「今日」に変えたという事実です。小さくても今日始めた人と、大きな計画を温め続けている人。1年後に別の場所に立っているのは、間違いなく前者です。
「もう遅い」という思い込みについて
最後に、多くの人の足を止める「今さら始めても遅い」という思い込みに触れておきます。たしかに20代から学んできた人には、蓄積では敵わないかもしれません。しかし比べる相手が間違っています。比べるべきは他人ではなく、「学ばないまま10年後を迎えた自分」です。10年後のあなたは、確実に今日のあなたより歳を取っています。その時に学び始めるくらいなら、今日始めた方がいいに決まっている。「遅すぎる」と感じるその感覚は、10年前にも同じように感じていたはずのものです。同じ後悔を10年後に繰り返さないこと。それが、後悔しない人生の最も具体的な一歩です。
まとめ──後悔しない人生は、今日の30分から
人生で後悔しないために社会人が今やるべきことは、先送りしてきた「学び」を、今日、小さく再開することです。学びは見える世界を広げ、選択肢を増やし、複利で人生に効いていきます。10年後のあなたが「あの時始めてよかった」と振り返れるかどうかは、今日の30分にかかっています。
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