スキルを足すほど、市場価値が上がるとは限らない
「自分の市場価値を高めたい」。そう考えたとき、多くの人がまず資格の取得や新しいスキルの習得に向かいます。プログラミング、英語、マーケティング——たしかにどれも価値あるものです。けれど、スキルを次々と足していけば市場価値が上がるかというと、話はそう単純ではありません。
むしろ、スキルだけを追いかける人は、時代の変化とともに価値が目減りしていくリスクを抱えています。なぜなら、特定のスキルは陳腐化が速いからです。今日重宝される技術が、数年後には当たり前になったり、AIに置き換わったりする。だからこそ、スキルを足す前に鍛えておくべき「土台」があるのです。
なぜスキルだけでは陳腐化するのか
背景にあるのは、AIの台頭です。ある試算では、これからの10年で今ある仕事の約半分がAI技術の影響を受けるとも言われています。マニュアル化できる定型的な作業や、決まったルールの中で速く正確に処理する仕事ほど、AIが引き受けていきます。
つまり、「言われたことを正確にこなすスキル」の市場価値は、相対的に下がっていくのです。世の中は、変化が速く先の読めないVUCAの時代に入りました。昨日の正解が今日には通用しない状況では、特定のスキルだけに頼るのは危うい。問われるのは、「自分の頭で考え、まだ誰も解いていない問題に解を出せるか」という、もっと根本的な力です。
本当の市場価値の正体は「考える力」
では、その根本的な力とは何か。それは、原理から自分で答えを組み立てる「考える力」です。世界で活躍する実業家たちの強みは、ノウハウを知っていることではなく、状況が変わっても自分で解を生み出せることにあります。彼らがリベラルアーツ、つまり数学や論理学、哲学、歴史といった学問の基礎を厚く積んでいるのは、この力の土台になるからです。
考える力があれば、新しいスキルが必要になっても、その都度すばやく習得できます。土台がしっかりしているから、上にいくらでも積み上げられるのです。逆に土台がなければ、スキルを足しても砂上の楼閣になってしまいます。市場価値を本当に高めたいなら、まず鍛えるべきはこの土台のほうなのです。
土台を鍛えるなら、数学と読書から
考える力の土台として、特に効くのが数学と読書(国語力)です。数学を学び直すと、目に見えない情報を頭の中で自在に動かし、問題に対して最短の筋道を立てる力が育ちます。読書で国語力を磨けば、本から正確に知識を吸収し、思い込みに流されず物事を論理的に解釈できるようになります。この二つは、どんな専門分野を学ぶときも下から支えてくれます。基礎学力を大人が学び直す意味については、エンリッチ実学院でも繰り返しお伝えしている通りです。
土台がある人は、変化に強い
考える力という土台を持つ人の最大の強みは、変化に強いことです。世の中で求められるスキルは、数年単位で移り変わっていきます。土台のない人は、流行のスキルを追いかけては陳腐化し、また次を追いかける——という消耗戦に巻き込まれがちです。一方、考える力という土台がある人は、新しい状況に出会っても、原理から考えて自分で対応策を組み立てられます。だから、どんな変化が来ても揺らがないのです。
これは、大きな建物にたとえると分かりやすいでしょう。土台がしっかりしていれば、上の階はいくらでも増築できますし、一部を建て替えることもできます。けれど土台がもろければ、どれだけ立派な内装を施しても、揺れが来た瞬間に崩れてしまう。市場価値も同じで、見栄えのするスキルを並べる前に、まず崩れない土台を築くことが、長い目で見て最も確実な投資になります。
「情報的価値」に振り回されないことも、価値になる
もう一つ、見落とされがちな視点があります。それは、自分自身の「価値」を、世間の基準だけで測らないことです。世の中の商品には、本来の機能による価値と、ブランドやイメージによって膨らんだ「情報的価値」があります。人の市場価値も同じで、肩書きや年収といった「情報的価値」に振り回されると、本質を見失います。大切なのは、自分が実際にどんな問題を解決できるかという中身です。土台を鍛えることは、この中身を太くしていく営みでもあるのです。
「すぐ役立つ」より「一生使える」を選ぶ
市場価値を考えるうえで、もう一つ大切な視点があります。それは、「やりたいこと」を軸にすることです。ある研究では、義務感で働く組織より、社員の「やりたい」を尊重する組織のほうが、生産性に圧倒的な差が出たという結果もあります。好きなこと・やりたいことを突き詰める人は、AI時代にこそ強い。なぜなら、「やりたい」という非合理な意思は、人間だけが持てるものだからです。
すぐ役立つノウハウはすぐ役立たなくなりますが、考える力という土台は一生使えます。スキルを足す前に、まずこの土台に投資してみてください。学び直しの一歩を踏み出したい方は、エンリッチ実学院をのぞいてみてください。あなたの市場価値を、根っこから支える場所です。
